移住者として今までを振り返ってみると・・・

8年前の今日も、気持ちのいい青空でした。前の日は、福島駅西口あるリッチモンドホテルに宿泊。右も左もわからず、光り輝くイトーヨーカ堂の看板を目指して夕飯の買い出しへ。それを部屋で食べました。予約した部屋は、大きいベッドのある部屋でした。自分の心が快適に過ごせるように、そして3日前にフランスから帰ってきたばかりの体をしっかり休ませるために、ちょっとだけ奮発しました。

 

2月22日、千葉県市川市の自宅から荷物を送りだした後、福島へ来ました。金谷川の不動産屋さんへ行き、福島大学の先生が下見してくださった1Kの部屋に初めて入り、「やばっ!荷物入らないかも」と思った不安は的中。23日の夕方、引っ越し業者さんが運び入れた荷物の山を前に呆然としたのを覚えています。元の自宅は2Kでした。

 

そう!荷物が届いたのは夕方。前の人が残してくれた電灯はあったものの、それ以外は何もなくがらーんとした部屋。日が沈みつつあるのにカーテンもなく、しかも新しい部屋の窓は今までよりも高い!届いたカーテンを付けてみたら寸足らず。どこでカーテンが買えるかも分からなかったので、しばらくはそのままで生活してました。

 

あれから8年。今は家が広くなり、行動範囲も交友関係も活動の幅も広がり、周りの人は私を根っからの福島人だと思っていますが、私は移住者です・・・と言っても、そんな自覚は全くなく、「やるべき事が決まったから福島へ引っ越してきただけ」だと今でも思っています。東京から川崎へ、川崎から市川へ引っ越した時と同じ、市川から福島へ引っ越してきただけ。引っ越しと移住の違いが何なのか、ずっと考え続けています。

 

福島生活8周年を記念して、今まで感じたことを振り返ってみようと思います。

 

福島市へ来て驚いたこと2つ

1つ目は、街中のお店で「熊鈴あります」という張り紙を見つけたこと。猿や猪は予想していましたが、熊は想定外でした。でも今は共存共栄だと思っています。ある日、松川町の土合舘公園に、早朝5時ごろ熊が出て騒ぎになりました(真偽のほどは定かではありませんが)。その時、ある町の人が「熊が出る時間に歩いてる方が悪い」と言いました。それを聞いた時、「松川町っていい町だなぁ」と思いました。

 

カナディアンロッキーの観光地に、バンフという町があります。国立公園の中にある町で世界中から沢山の観光客が訪れます。この町は熊と共存共栄。街中のごみ箱にはすべて蓋があり、人は簡単に開けられますが、熊が開けられないような作りになっています。

 

昔ガラケーで撮ったカナディアンロッキーの写真。縦長!!

 

もう1つは、私と同じ年齢、誕生日も1ケ月違うだけの女性が、すごーーーく訛っていたこと。さらに、福島での生活を始めた頃の私の周りにいた人たちが、訛っている人ばかりだったこと。これは、両親が福島県出身の私にとってさえも、かなりのカルチャーショックでした。当時の私にとっては、英語よりもイタリア語よりも、何よりも難しい福島弁。電話がかかってきたときなんて、何を言っているのか意味不明。でも今はバイリンガル。通訳もできますが、それでも時々「えっ???」と思う単語が出てきます。

 

地方は生活費が安い???

これは都会でよく言われていることですが、決して安くはありません。電気代はさほど変わりませんでしたが、ガス代、水道代は上がりました。ガス代は都市ガスがプロパンガスになったから仕方ないのかもしれませんが、水道代は高いっ!!でも、水道から出てくる水はとっても美味しいので、水の質には大満足です。

 

お米を炊くのも、料理をするのにも水は不可欠。同じ素材を使っても、水が違うと味が変わる気がします。空気も変わると味の好みも変わるのかもしれません。添乗員時代はワインが大好きで「海外のワインは最高!!」と思っていましたが、今は圧倒的に日本酒を飲む方が多くなりました。ワインも国産、特に福島産です。昔、チーズや生ハム・オリーブをおつまみにワインを飲んでいたのが、今は豆腐やチーズのみそ漬けをおつまみに日本酒やワインを飲むのが幸せなひと時です。味の好みが変わったのは、年齢のせいかもしれませんが・・・。

 

世界中を巡っていると、その土地ごとに郷土料理があり、その郷土料理に合うお酒や調味料があります。わざわざ意識をしなくても地産地消をしていて、地元でつくられたものを愛する心が折々に伝わってきました。地方での暮らしは、海外での暮らしに近いのかもしれませんね。

 

「田舎で暮らすと野菜がもらえるからいいよね」というのも、よく言われるフレーズです。ただ、もらえるほど仲良くなるまでには時間がかかります。私は、いつかもらえる日を楽しみに、最初の数か月は野菜を買っていました。もらえるようになったのは夏頃。右からも左からもきゅうりが届くようになり、家で漬物を作る人の気持ちが分かるようになりました。家に帰ると桃が玄関先に並んでたり、ドアノブにかぼちゃが掛けられてたりもしました。

 

新鮮な農産物は、周りにたくさんあります。道の駅やJAの直売所、農家さんのところへ気軽に買いに行けます。「野菜とか果物が安いんでしょう」とも、よく言われます。正直、値段だけを見ると都会のスーパーの方が安いように感じます。ただ、質は今の暮らしの方が断然いい!!良質のものを、いつでも適正価格で買えること。周りに田畑がたくさんあること。この生活が当たり前になった今、都会での暮らしに戻りたいという気持ちはなくなりました。食べ物には困らないという絶対的な安心感があります。農業や漁業ができる人の強さを身をもって感じたのは、福島で暮らし始めてからです。

 

お金は、都会で暮らしているときほど使わなくなった気がします。どうしてか。余計な買い物をしなくなったからだと思います。福島には、海外で見てきたようなブランド物はほぼありません。お店の数も少ないので、あっちこっちのお店をただ見て回るということをしなくなりました。福島で暮らし始めた頃は、選ぶほどお店がないのがつまらなくて、東京へ戻るたびにお店巡りをしていました。でも今、昔の生活を振り返ってみると「どうしてあんなにお金を使ってたんだろう」と思っています。ストレス発散方法の一つだったのかもしれません。お店巡りをしなくなったのも、年を重ねて体力がなくなっただけなのかもしれませんが・・・。

 

外食は、昔も今も大好きです。東京を拠点に仕事をしていたころは、銀座や新橋、丸の内や日本橋で食事をしていたので、そこに比べると福島での外食はかなり安いです。福島へ来て、いろいろな方と外食をして思うことは、私の周りの皆さんは、どこで何を食べるかということ以上に、誰と楽しい時間をどう過ごすかということを大切にしているような気がします。コロナ禍前から、席の感覚がゆったりとしているのも、外でいい時間を過ごせる要因になってるんだと思います。

 

車がないと生活ができない???

こう思っているのは、地元の方の方が多いと思います。私は最初の2年間、職場の車を借りて通勤していました。スズキのEVERY、ワゴン車です。自分のものではないし大きいし、運転に全く自信がなかったので、仕事以外で乗ることはありませんでした。でも、ちゃんと生活は成り立っていました。最寄りの駅まで徒歩2分だったことが大きいと思います。なので慣れない町で、車の運転ができない、またはしたくない場合は、駅やバス停の近くで暮らすことをお勧めします。

 

福島で暮らし始めてすぐの頃、大雪が降ったことがありました。その日は早朝から職場へ行かなければいけませんでした。外は雪が積もっていて、やむ気配がありません。同僚から電話がかかってきて、「気を付けて来てね!」と言われました。単純で無知な私は「気を付ければ行かれるんだ」と思い、車を車庫から出しました。職場までは、家の角を2回曲がって広い通りに出れば、あとは直線で10分。でも最初の角を曲がった瞬間、「気を付けても行かれない」と思いました。

 

元々ペーパードライバーだった私。一度出した車をUターンさせるのもバックさせるのも全く自信なし。ならば「直線をただ走った方がいい!」と決意し、職場へ向かいました。着いた職場の入り口は、しっかり雪かきがされ、中には明かりがついてストーブが焚かれていました。あの時に感じた安心感を今も忘れないので、雪かきは私が大好きなことの一つになりました。

 

その帰り道、窓の外がだんだん白くなってきました。「これがホワイトアウトというものか」と思い、どんどん白くなっていく景色にますます不安を感じたところで信号が赤になりました。「どうしよう」と思って何気にフロントガラスに触ったところ・・・ただフロントガラスが曇っているだけでした。暖房をどうやったら曇り止めとして使えるのかも分からず、仕方ないので窓を開けて家まで帰りました。今では雪道の運転にもすっかり慣れました。

 

引っ越しの時に自転車を持ってきました。幼少期からずっと生活の場だった東京湾岸エリアは、ほぼまっ平ら。自転車は生活に欠かせないものでした。私がイメージしていた松川町もまっ平ら、来てみたら坂道だらけでした。しかも、やっと上り切ったと思ったら、すぐ下り坂。最初のうちは車代わりに使っていましたが、自分の車を持つようになってから使わなくなりました。春になったらまた使い始めようかと思ってます。春が近づくと毎年思っている気がしますが・・・。

 

1時間に1本しかない電車を、最初の頃は不便だと感じていました。今では終電の時間だけを気にして、電車でも遊びに出かけています。待ち時間を上手に過ごすコツも覚えました。車がなくても生活はできます。自分で車の運転ができると行動の幅はかなり広がります。

 

移住してよかったことは???

家から一歩外へ出ただけで、「きれいだなぁ」と思える風景がいつもあること。季節の変化を身近に感じられること。空が大きくて、山が目の前にあって、遠くまで見渡せること。人と人とのつながりが強いので「なんとかなる」という安心感があること。高い建物がないので上から物が落ちてこないこと。

 

特に、大きな地震を最近2回経験して、上から物が落ちてこなくて岩盤がしっかりしている安心感は、何にも勝ると思いました。あとは家がつぶれないことを祈るのみっ!

 

 

春の右輪台山。しだれ桜の並木道は、散り際も美しいです。

 

夏の「みっこちゃんちの畑」

 

朝市で早起きした日に見た山の朝焼け

 

白鳥が毎年やってきます

 

福島生活も9年目に突入!!

福島の皆さま、今後とも末永くよろしくお願いいたします<(_ _)>